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第3回 店長マネジメントのスタート

良いオペレーションをする
お店は店長や支配人ひとりで決まるが、当然であるが店長や支配人ひとりでは何も出来ない。
ご来店して頂いた全てのお客さまの満足を得ることなど不可能である。
良いオペレーションをすることがお客さまの満足を得ることを判っていても、その良いオペレーションをいかにしてするかを判っている店長・支配人は数少ない。
「お客様を大切にしよう」「お客さまは神様です」とお念仏を唱えたところで、良いオペレーションが出来るわけではない。
現に、そんな看板を掲げているお店に行っても、そのような感じを受けた覚えは未だに私には経験がない。
しかし、看板は掲げていないが、そのような感じを受ける老舗の繁盛店やホテルを幾つかは知っている。
そんなお店を見て感じることは、女将さんと仲居さん、そして仲居さんと板場さんの呼吸の取れたオペレーションである。
実に見事なチームワークである。良いオペレーションとは、そんなお客さまの満足を得ることの出来る、仕事の分担とチームワークのことである。
そんな良いオペレーションをするためには、仕事の目的を共有することは勿論のこと、良いオペレーションをするための仕事の仕組と、そして、みんなの力を結集できるチームワークを考えなくてはならないのである。
つまり、仕事に対するマインドと、仕事を割り振る分業の仕組を開発することである。
この、マインドと仕事の分業の仕組が合体した時に、始めて良いチームワークが生まれ、結果としてお客さまの満足を得ることができるのである。
だから、いくら「お客さまは神様です」と唱えたところでお店は良くならないのである。
そこで今回からは、この良いオペレーションを実現するには、店長・支配人はいった何をするのかを、基本と実践で展開してゆくことにする。
その前に、今一度店長マネジメントの全体像について確認しておきたい。
この全体像を理解しておかないと、今後展開する各部分との関連性が分からなくなり、一生懸命に努力しても成果が小さいものになってしまうので注意しなくてはならない。
店長マネジメントの基本とは、お客さまの満足を得る良いオペレーションと、その良いオペレーションを前提とした良いコストコントロールを行うことで、結果として売上・利益の成長を図るものである。
つまり、良いオペレーションが売上の決定要因になり、良いコストコントロールが利益の決定要因になるのである。
この良いオペレーションと良いコストコントロールが、店長マネジメントの中核になり、基本になるのである。
先ずは、このことをしっかりと頭の中に叩き込んで頂きたい。

スタンダードを具体的に言葉と数値で表現する
経営理念を形に表したものが、品質(Quality)・接客(Service)・掃除(Cleanliness)・雰囲気(Atmosphere)で、その品質(Q)・接客(S)・掃除(C)・雰囲気(A)の運営レベルを決定したものが、状態のスタンダードである。
そして、そのQ・S・C・Aの状態を、経営の数値で決定したものが数値のスタンダードである。
この状態と数値のスタンダードは、毎年改定するもので、毎年上げ続けなくてはならないものである。
その年に決定したスタンダードは、その年のスタンダードで、その年の最低基準の運営レベルであるとの全員の認識が発展への道になるのである。
これが私のスタンダードの定義である。
スタンダードを不変の経営哲学と言う人もいるが、私は経営理念こそが不変の経営哲学で、スタンダードは時代と共に変化するものだと考えている。
さて、問題はこの先である。
このホテルや店舗の運営基準を表した、状態と数値のスタンダードを先ずは具体的に表現し、働くみんなで共有することである。
しかし、この状態と数値のスタンダードを持っていて、更に毎年改定をしながら進化しているところは残念ながらあまり見たことがない。
そこで、スタンダードを状態と数値で表現することから始めなくてはならない。
その前に、現状のスタンダードレベルを正しく把握しなくてはならない。
これには、お客さまの要望や不満といったことも列挙する必要がある。このお客さまの要望と不満を取り入れて、目指す状態と目指す数値を具体的に表現することが、最初のスタンダード作りになってくる。
そして、働く人達がそれを見て、我がホテルは、我がお店は、こんな状態を目指しているのだということを言えなくてはならないのである。
何も難しいことではない。私たちは何々するという形の表現でよいのである。
特に注意しなくてはならないことは、具体的に表現することと、その一年間で達成できるレベルであって、店長としてそのスタンダードに挑戦できるレベルであることが大切である。
勿論、お客さまの満足が高まることは言うまでもないことである。
つまり、運営レベルと経営効率を高めてゆくための「ものさし」である。
これが、スタンダードというものである。
何度も言うが、スタンダードとはその年の最低基準の運営レベルであって、次の年は新たに設定されたスタンダードに挑戦してゆくのである。
そのためには、常日頃の不断の改善がなにより必要になってくるのである。
この活動が、あなたのホテルやお店を進化させ、そしてあなたを成長へと導いてくれるのである。それは、お客さまの満足を得ることへのあくなき追及と、徹底した効率経営への挑戦でもある。
質を高めながら、同時に効率を高めるからこそ、最大限の売上高と最大限の利益を達成する事が出来るのである。
これが、繁盛店、そして大繁盛店へと歩んでゆくためのスタートである。

 

ベクトルの明確化
設定したスタンダードをファイルに入れておいたり、店長室の棚の上に置いておいても、それは絵に書いた餅と同じで、何も実行に移されることはない。
スタンダードは、働くみんなの共通した目標である。
特にQ・S・C・Aに関する状態のスタンダードは、働く職種に関係なく、全員が理解しなくてはならない全体の運営目標である。
それは、お店の運営は仕事の分業とチームワークによって、はじめてお客さまの満足を得ることができるからである。
一人ひとりの力も勿論大切であるが、全員の力が結集してスタンダードは実現されるのである。特に設定したQ・S・C・Aのスタンダードについては、一人ひとりに説明すると共に、各人の役割分担についても説明し、これから向かおうとするお店の方向性(ベクトル)についての理解を得なくてはならないのである。
折角スタンダードを設定しも、そのことを働くみんなに説明しないことには、何も始まらないのである。
この説明は、出来るだけ一人ひとりに説明することを勧める。
朝礼等でみんなに話すことも出来るとは思うが、本当にみんなの力を結集して、経営資源である人・物・お金・情報を最大限に活かすためには、一人ひとりに話した方が、結果として良い成果に結び付く。
要は、できるだけ多くの機会に自らが参加して、向かうべき方向について話すことである。スタンダードを設定し、そしてみんなが向かうべきお店の方向性と自分の役割分担を理解できれば、確実にお店は良くなってゆく。
一生懸命に努力してもなかなか成果の出ないお店の共通点の一つに、一人ひとりのバラバラの動きがある。
一生懸命の方向がみんな違うために、チームワークのないオペレーションになってしまい、結果としてお客さまの満足を得ることが出来ないのである。
これでは、みんなの努力も報われない。
だから、店長・支配人は、常に働く人達に向かう方向性(ベクトル)について話し続けるのである。
これは、店長・支配人のリーダーとしての最低必要条件である。
働く人達の一番の不満は、
店長・支配人は何をしたいのか?
今のお店の課題は何か?
近い将来どこに向かおうとしているのか?
そのために、私たちに何を期待しているのか?
と言ったことが中心である。
みんなお店のことを心配しているのであって、一緒にお店を良くしたいと思っているのである。それなのに、店長・支配人が何も方向性を示さないから不安に思い、そしてその不安が不満になってくるのである。
スタンダードを設定し、そして、みんなにこれからの方向性を示し、一人ひとりの役割分担を明確にすることで、働くみんなの力を結集するとは、そんなベクトルの明確化からスタートするのである。

役割分担の明確化
スタンダードを設定し、そのスタンダードを働くベクトルとしてみんなの力を結集することが出来れば、次は一人ひとりの役割分担の設定である。
最初にも説明したが、状態と数値のスタンダードは毎年上がり続けることが基本にあるということは、そのスタンダードを表現する一人ひとりの役割分担も毎年上がり続けるということである。
つまり、一人ひとりのパフォーマンスレベルが毎年上がってゆくということである。
人事的に言うならば、職務(仕事の内容と仕事の質)、そして、職能(仕事を遂行する上での能力)が毎年上がり続けるということである。
労働集約型のホテルビジネスやレストランビジネスは、この一人ひとりのパフォーマンスレベルが全ての業績を決定してしまう。
いったんこのパフォーマンスレベルの質が落ちると、なかなか上がらないものである。
落ちる理由にはいろいろなことがあるが、最大の理由は人の入れ替わりでスタンダードが保てなくなることになる。
しかし、人が入れ替わることで、その都度スタンダードが落ちるようでは、チェーンはおろか、個店経営もできない。
だから、店長マネジメントのスタートにスタンダードの設定を持ってきたのである。
スタンダードを明確にすることで、全てのことが明らかになってくるのである。
店長マネジメントとは、そんな、状態と数値のスタンダードを達成するために考えられたものであり、今尚、そのマネジメントは進化し続けているのである。
特にQ・S・C・Aの状態のスタンダードについては、人が入れ替わろうが、社員が少なくなろうが、そのこととは関係なく、スタンダードを上げ続けることのできる、店長マネジメント技術が必要になってくるのである。
勿論、一人ひとりの資質は重要であるが、その前にスタンダードに基づくオペレーションの分業の仕組(仕事の内容と仕事の質)を毎年明確にすることと、その仕事を教えることができる教育の仕組をつくることである。
これが、良いオペレーションを行うための基本である。
これが出来るようになってくると、オペレーションが安定し、そしてオペレーションが向上してくるのである。
これが店長マネジメントの一つの柱である「良いオペレーション」である。
今までのように、人が入れ替わることでスタンダードが落ちているようでは、店長の存在価値もなければ、そこには店長マネジメントも存在しないことと同じである。
店長・支配人は、スタンダードを維持し、更に向上するために存在しているのである。
そのために、良い人を採ることは重要であるが、人が入れ替わってもスタンダードが維持され、そして向上することの方がもっと重要である。
良いオペレーションをするということは、そんなスタンダードづくりに基づいた、オペレーションの分業づくりと、教育を中心とした人づくりのことである。
次回は、このオペレーションの分業づくりと、教育の仕組みづくりについて考察するつもりである。

以上

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