ノウハウ

第9回 サービス・マネジメントPart2

サービス・マネジメントPART2

前回もお話したが、今回のサービス・マネジメントは、店長・支配人のマネジメントの基本であるQuality(品質)・Service(サービス)・Cleanliness(クレンリネス)・Atmosphere(アトモスフィア)のオペレーションの一つであるサービスの質を進化させることで、売上高の増大を図るためのマネジメント手法である。それは、サービスが商品化し、サービスの良し悪しで店の評判が決まり、次回の来店に結び付く決定的な要因の一つになってきたためである。
サービスの質を高めることは大変難しいことだが、難しいからこそ独自性になり、お客さまの感動を得ることが出来るのである。お客さまの方も消費を繰り返す中で学習し、プロフェショナル・コンシューマー(プロシューマー)と言われる消費のプロになっている。だから、単なる改装や改修だけでは感動しないのである。そこで、中身で勝負することで、繁盛店への道を歩むのである。
そこでサービス・マネジメントでは、まずサービスの質を具体的にステップ(段階)で表現している。それはサービスのステップを具体的に表現することで、サービスのレベルを明確にするためである。また、サービスのステップを明確にすることで、自店舗がいったいどのレベルのサービスをお客さまに提供出来ているのかを判断してもらうためであり、さらには一つ上のサービスを目指すための目標の設定をしてもらうためである。そこで今回は、そのサービス・マネジメントのステップ2とステップ3について解説してゆきたいと考える。

ステップ2 お客さまをお待たせしないこと

サービス・マネジメントのスタートは、アピアランスと挨拶のサービスである。それは、アピアランスと挨拶が、お客さまをおもてなしする我々サービス業にとっての基本的な姿勢になるからである。つまり、このアピアランスと挨拶のサービスが出来ていないことには、サービスについて語る資格も無いと言うことである。このアピアランスと挨拶のサービスが出来るようになって、はじめて今回お話しするステップ2のお客さまをお待たせしないサービスへの挑戦と言うことである。

お客さまとのコンタクトポイント

お客さまとお店の人が接する点をコンタクトポイントと呼んでいる。そのコンタクトポイントの中でも特に重要なものは、サービスオペレーションの基本である、
(1)ご案内でお待たせない、
(2)ご注文でお待たせない、
(3)料理の提供でお待たせない、 そして
(4)会計でお待たせないことの4つである。勿論、もっと細かくこのコンタクトポイントを分解することも出来るが、まずは4つのコンタクトポイントからスタートである。
この4つのコンタクトポイントで、全てのお客さまをお待たせしないことが完璧に出来た状態を「お待たせしないサービスオペレーションの実現」と言う。つまり、ご来店頂いた全てのお客さまのご案内でお待たせすることがなく、そして、ご注文でも全てのお客さまに対してタイミング良く行え、お料理の提供は適正な時間でのセイムタイムサービス(同時・同卓サービス)が出来ており、最後の会計でも全てのお客さまをお待たせしないで出来るということである。
そして、この4つのことが全てのお客さまに、確実にもれなく、しかも効率よく出来るようになると、最大限の売上高確保と・最大限の利益確保につながってくるのである。
店長・支配人の仕事の責任の第一は、なんと言ってもご来店頂いた全てのお客さまに満足して頂くと言うお客さまに対する責任である。大切なことは、全てのお客さまの満足である。その全てのお客さまに対して最低限しなくてはならないサービスがお待たせしないサービスである。
しかし、たった4つのお客さまのタイミングでのお待たせしないサービスではあるが、これがなかなか出来ている店舗がない。これが出来ないことには、Step3・Step4に進んでも全く意味がない。それは、全てのお客さまの満足を得るオペレーションが出来ていないことによる、不人気の蓄積になるからである。
もし、自店舗のサービスレベルが判らないとするならば、一週間で一番忙しい時間帯の自店舗に来店されるお客さまの状態を、この4つのタイミングで観察すれば、その実態はすぐに判るはずである。

コンタクトポイントでのお店の評価

仮に、1年間に10万人・20万人のお客さまが来店しているのであれば、その4倍である40万回・80万回のコンタクトポイントであなたの店がお客さまから評価されているのである。店の評判とは、そんなお客さまとの接点から生まれてくる。
その接点から生まれる満足感や不満足感が、次の来店に結びつくかの重要な岐路になってくるのである。だから、これが出来ていない状態で仮に次のステップに進んだとしても、お客さまの満足を得ることなど不可能なのである。
現に、雰囲気が良い店であっても、席が空いているにもかかわらずお客さまを平気で待たせているような店を見ると、お客さまがイライラしているのに気付かない従業員の様子が伺える。同じように、料理で待たせていたり、最後の会計で待たせる店も沢山ある。 これでは、お店が繁盛するはずがない。
お客さまをお待たせしているということは、お客さまの大切な時間を奪っているということである。スローフーズが売り物の店であっても、ゆっくりと食べることは望んでいても、案内や会計で待たされるのは、やはり嫌なものである。
サービスにはそれぞれ常識的な範囲でのサービス時間があるはずである。先ずはこのことができるサービスオペレーションをすることである。
これが、Step2の「お待たせしないサービス」である。

オペレーションの力は、時間当たりの来客数で判断する

お客さまが長時間いて、客席の回転がとても悪い店があるが、そんな店に限ってサービスが悪い。サービスが悪いから、お客さまの滞席時間が長くなるのである。
一例として、みなさんのお家の近くに必ずある回転寿司。回転寿司でサービスの悪い店とは、レーンのお皿の流れが良くない店である。お客さまは好きな物がこないから待つことになる。それもイライラしながら待つ。だからお客さまの滞席時間が長くなる。しかもお客さまは満足していないのである。
お冷サービスや灰皿交換の悪い店も同じである。それはサービスをしないからお客さまが動かないのである。私は、お客さまの滞席時間は店のサービスオペレーションのバロメーターであると考えている。
だから常に1時間あたりの来客数を問題にするのである。
レストランビジネスでは、すぐに抽象論で仕事をする習慣があるが、私は全てのことは数値化できると考えているし、数値化で表現できないものは目標になり得ないとも考えている。勿論オペレーションも同じである。4つのお待たせしないサービスもそのオペレーション力は、時間当たりの来客数の変化に必ず出てくる。
ここで、図表1(1時間あたりの最大来客数からオペレーション力を評価する)を見ていただきたい。この表は、自店舗のオペレーション力を数値で評価するためのものであり、オペレーションの向上を数値で確認するためのものである。

図表1.1時間あたりの最大来客数からオペレーション力を評価する
   ※このお店は、40卓(120席)で、1組当たり平均で2.5人である。

・卓数 × 1組当り平均来客数 = 卓数最大来客数
(40卓)     (2.5人)       (100人)
・1時間 ÷ 目標滞席時間 = 時間当り客席回転率
 (60分)    (40分)       (1.5回転)
・卓数最大来客数 × 時間当り回転率 = 1時間あたりの最大来客数
   (100人)      (1.5回転)        (150人)

・現状の最大来客数 ÷ 1時間当りの最大来客数 = 自店舗のオペレーション力
   (120人)         (150人)          (80%)

これは1時間当たりの最大来客数目標を算出し、そして、現状の自店舗のオペレーション力を評価したものである。この店の場合であれば、オペレーション力80%ということである。良いオペレーションが出来れば、その時の1時間あたりの来客数は増えることになるし、逆にオペレーションが良くない時は1時間あたりの来客数が少なくなるのである。
4つのお待たせしないサービスが出来るようになって、オペレーションに力が付いてくると、この数値のバラツキは少なくなり、確実に売れる店に変身してくるのである。

ステップ3、感じの良いサービス

サービスの進化した形の3番目は、アピアランスと挨拶が出来、そして全てのお客さまをお待たせしないことが出来たら、それらを感じよくやれるようになることである。
いくらアピアランスと挨拶が出来、そしてお客さまをお待たせしないことが出来るようになっても、それで全てのお客さまの満足を得ることが出来るわけではない。
やはり、サービスには感じが良いことが必要になってくる。
感じよく思って頂く一番は、なんと言ってもサービス業では重要なことである。しかし、感じよく思って頂くことが重要なことは分かっていても、実際にはこれがなかなか出来ないのである。特に忙しい時間などは、非常に難しい。
お客さまの立場で思い出して頂きたい。忙しい時間に何か物を頼もうとすると、直ぐに嫌な顔をされた経験が誰にも一度や二度はあると思う。
お店のサービスの質を高めるには、まずはこんなことから直さなくてはいけない。この問題の本質は、仕事が出来ないことに起因していることがよくあるので、今一度一人ひとりの仕事振りを確認してみると良い。
次に、お客さまに感じよく思って頂くためには、一つひとつの動作・作業が丁寧にできることも必要になってくる。
折角お待たせしないで美味しく作った料理も、雑にテーブルに置かれたのでは、お客さまの美味しさも半減してしまう。また、オーダ時に上から見下ろすようにご注文を伺ったのでは、お客さまから感じが悪く思われてしまう。そこで、考えられたのが、丁寧な動作と丁寧な作業である。
例えば、最後のお料理を、両手でサービスするとこなどは丁寧さを表現する最高の方法である。また、膝をついてご注文を伺うのも、お客さまに感じよく思って頂くための方法である。このような動作や作業を、ホスピタリティー動作、ホスピタリティー作業と言っている。感じの良さを単なる抽象論で考えるのではなく、こうして動作や作業から入ることで、最終的にはサービスマインドを身に付けるのである。
形から入りながら、心を身に付けるのである。全ては、お客さまに感じよく思って頂き、そして楽しくお食事を召し上がったいただくためである。他にもまだまだ沢山のホスピタリティー動作・作業が出てくるが、この続きは皆さんに考えていただきたいと思います。それは、この問題は店長・支配人の働く基本姿勢に起因しているからである。
店の状態は、店長・支配人の働く基本姿勢に大きく左右されているのである。
現に、店長・支配人が何時も暗くてネガティブに働いている店で、明るく楽しい店などないし、また、店長・支配人の作業が雑なお店で、丁寧なサービスを受けることも基本的にないからである。すべては、店長・支配人の働く基本姿勢で決まるのである。
Step3は、そう言った店長・支配人としての働く基本姿勢も含めたホスピタリティーの原点でもある。
次回は、ステップ4の状況対応サービス、ステップ5会話の出来るサービス、そして最終的な出来映えのステップ6の特別なサービスについて説明することにしよう。

以上