ノウハウ

第11回 マネジメントツールを使おう part2

マネジメントツールPart2

帳票を使わなくなり、勘で食材の仕込み作業を始めたり、ワークスケジュール表(稼動計画書)に来客数予測や作業割り当てを書かないで、その日暮しの場当たり的なオペレーションを行ったり、また日々の発注作業を、食材の在庫棚卸をしないで、勘で発注作業をし始めると、店は必ずおかしくなってくる。

私は、帳票を使わない状態をサボリと言っている。
それは、お客様に対しても、店で働く従業員に対しても、店長として責任を果たしていないからである。
各種のマネジメント帳票は、単に書くことが目的ではないはずである。
一番の目的は、なんと言ってもお客様の満足を得るためである。
それは、帳票を使用することで、仕事のムダ・ムリ・ムラをなくすことによる安定した店舗運営である。さらには、店で働く人達が何時も安心して仕事ができるようにするためのものでもある。

そんな目的遂行のために、各種のマネジメントツールを使いこなせるようにならなくてはならない。
まだまだマネジメントツールが使いこなせなくて悩んでいる店長も多いと思うが、目的遂行のためには、各種のマネジメントツールを確実に使いこなし、そして、その作業が日常的に出来るようにならなくてはならないのである。
この面倒なことを当たり前に出来るようになってくると、店長のマネジメントレベルも大きく向上してくることを忘れないでもらいたい。
そこで今回は、前回に続き日常的に使うマネジメントツールと、特別な時に使うマネジメントツールを紹介してゆくことにしよう。

今回紹介するのは、全部で6つのツールである。
1) 週間時間帯別来客分析表
2) ホール開店チェック表
3) 競合店調査表
4) 自店舗視認性評価シート
5) 自店舗商圏調査シート
6) informationシート


1.週間時間帯別来客分析表

それでは、はじめに週間時間帯別来客分析表を紹介するとしよう。
この週間時間帯別来客分析表は、週間管理の基本にもなってくるものでもある。
週間管理の基本は、週単位での問題発見と対策活動を行うことで、問題点の早期発見と早期解決を図るものである。
その週間管理の中心に来るのが、週間時間帯別来客数分析表である。
週間時間帯別来客分析表は、来客数の変化を曜日と時間帯でしっかりと把握しながら、オペレーションの問題発見と対策活動を行ってゆくものである。
オペレーション対策の基本は、なんと言っても曜日別時間帯対策である。
この活動が店舗を発展へと導いてくれるのである。

週間時間帯別来客分析表4つのポイント

週間時間帯別来客分析表には、4つのポイントがある。
前回もお話したが、各種マネジメントツールを完全活用するためには、そのマネジメントツールのポイントをまずは、しっかりと理解しなくてはならない。
そのためには、各種マネジメントツールの全ての項目を記入することで終わるのではなく、そこからが本当の仕事のスタートであることを認識しなくてはならない。
それは、記入された数値から問題点を発見し、そして、原因の分析と対策の判断を行うことで、問題点の早期発見と早期解決を行うためである。そして、計画された通の数値を達成するのである。
そのためには、常に数値を把握しながら、問題の発見と対策の判断を行えるマネジメント活動を身に付けなくてはならないのである。
それでは、週間時間帯別来客分析表の4つのポイントについて説明しよう。

◆Point1.時間帯別・曜日別に来客数の増減を把握する。
オペレーションの問題発見は、ランチ・アイドル・ディナー・ナイトと言った時間帯と月曜日から日曜日までの曜日から行ってゆくのが基本になる。それは来客数が曜日別に変化があることと、時間帯で働く人達が違うからである。

◆Point2.曜日別に来客数の増減と前年比を把握する。
曜日別に来客数の増減と前年比を把握することで、曜日の変化を知ることができる。
曜日の変化には、ショッピングセンターなどのオープンの外的な要因や競合店の曜日販促等が考えられるので、その変化には十分に注意を払う必要がある。

◆Point3.時間帯別に1週間トータルでの来客数の増減を把握する
ランチ・アイドル・ディナー・ナイトと言う各時間帯の1週間トータルでの来客数の増減を把握することで、時間帯での大きな変化を知ることができる。時間帯での変化は、なんと言っても競合店のオープンである。例えば、ディナーに強い店が近くにオープンすれば、その時間帯の来客数に大きな変化が出てくる。大切なことは、その変化の度合いに応じてどう手を打つかである。

◆Point4.1週間トータルでの来客数の増減と前年比を把握する。
1週間トータルでの、来客数の増減と前年比を把握することで、店の現状を正しく知ることが可能となってくる。大切なことは、成長傾向にあるのか、逆にマイナス傾向になっているのかを、来客数の数と前年比で正しく認識することである。
大変だ!大変だ!と言いながら、何がどのように大変なのかを把握していない店長が実に多くいる。問題点を解決してゆくためには、数値と状態を正しく把握しながら、具体的な対策活動を行ってゆくしかないのである。

2.ホール開店チェック表

では次に、ホール開店チェック表を紹介するとしよう。
このホール開店チェック表は、日々の開店業務をもれなく確実に行ってゆくためのものである。日々の業務だからこそ、仕事にもれが出やすく、そして、そのことがオペレーションの乱れにつながり、知らず知らずのうちに売上高の機会損失に結び付くことになるのである。そんなことを防ぐのが、このホール開店チェック表である。

ホール開店チェック表の4つのポイント!

◆Point1.まずは、全ての開店作業を明確にする。
人によって開店作業のバラツキが無いようにするために、まずは店を正しく開店するための作業をすべてリストアップする必要がある。これによって、人の違いによる作業のバラツキを無くすのである。

◆Point2.時間の流れと各作業の順番を明確にする。
次に行うことは、開店までのタイムスケジュールを明確にすることである。これも人によってバラツキが出るので、開店までの時間と作業の順番を明確にすることで、確実なオープン作業が行えるようにするのである。

◆Point3.一つひとつの作業が終了したら?を入れる。
一つひとつの開店作業を確実に行ってゆくために、一つの作業が終了したらホール開店チェック表に、?マークを必ず入れるようにしなくてはならない。
帳票でよく見かけるのは、この?マークを入れることが出来ない店である。
たったこの?マークを入れるという作業であるが、この?マークを入れるということは、他の仕事にも共通することである。一つひとつ確実に行ってこそ店は成長するのである。?マークを入れることが出来ない店は、他の取組みも中途半端な状態になっていることが実に多い。

◆Point4.その日の開店責任者が全項目を確認し最後にサインする。
開店チェック表の最終確認は、その日の開店責任者が全ての開店作業の確認を行い、問題が無ければ最後に自分のサインをし、開店の挨拶をするのである。
このような活動が、一人ひとりの責任感覚を強くしてゆくのである。
今回は紹介しないが、ホール開店チェック表に連動する形で、キッチン開店チェック表、それにホール閉店チェック表とキッチン閉店チェック表がある。

3.競合店調査表

これから紹介するのは、日々使うマネジメント帳票とは別で、必要な時に応じて使う各種のマネジメント帳票である。
これらの帳票も店を繁盛店へと導いてゆくためには欠かせないものなので、一つひとつ確実に使えるようになっていただきたい。
それでは、はじめに競合店調査表を紹介しよう。
商売の基本は敵を知り己を知ることである。つまり、競争相手の強みと弱み、それに自店舗の強みと弱みを知ることで、今後の対策を練ってゆくのである。

競合店調査表の4つのポイント!

◆Point1.競合店の営業時間・卓数・席数及び駐車台数を正しく把握する。
競合する相手を知るとは、まずは競争相手の営業時間や、店の大きさとなる卓数や席数、それに駐車台数を把握することからである。 
私は、よく店長達に競争相手の質問をする。その質問とは、
(1)競争相手と思っている店はどこか?
(2)競争相手の営業時間と店の大きさは?
(3)競争相手のメニュー数は?
(4)競争相手の強みと弱みは?
(5)競争相手の取組みは?と言ったことである。
残念ながら、ほとんどの店長達は、①の競争相手止まりである。②から⑤は、ほとんどが感覚になっている。商売の基本は、敵を知り己を知ることからスタートである。
そのために、この競合店調査表が必要になってくるのである。

◆Point2.競合店のメニュー数・価格、それにQ・S・Cのレベルを正しく把握する。
ポイント1で説明した通り、競合店を正しく知るためには競争相手のメニュー数や価格、それにQ・S・Cのレベル等に対しての調査が必要である。特に価格については、プライスゾーンと価格帯の中心になるプライスポイントをつかむ必要がある。
こんな情報が、その後の販促活動に役に立ってくるのである。

◆Point3.競合店の売上高を平日・土曜・日祭日から算出し月商売上高を把握する。
地域1番店を目指すうえで必要になってくるのが競合店の売上高である。
単なる感覚で一番入っていると思っていても、実際に調査すると、地域一番店は別な所と言うことがよくある。
本当の意味で、地域1番店を目指すのであれば、競合店の売上高と自店舗の売上高からその違いを明確にしなくてはならない。
それでこそ本物の地域一番店になれるのである。

◆Point4.競合店の強み弱み、そして自店舗の強み弱みを知ることで、今後の対策案を立てる。
何度も言うが、商売の基本は敵を知り己を知ることである。
そこで、この競合店調査表では競合店の強み弱み、そして、自店舗の強み弱みを一言集約で表現し、これからの対策活動に役立ててもらいたいと考えている。
なかなか時間が取れないと言いながら、ほとんど競合店を見ない店長が実に多くいるが、自分が知らない間に、新メニューを導入していたり、店をリニューアルしていたり、さらには大きな販促をしていることがよくある。
自分達だけが努力しているわけではない。競争相手も必死で努力しているのである。
そんな競争相手を知ることで、さらに自店舗を強くしてゆく努力が今の時代には必要である。

4.自店舗視認性評価シート

売上高を決定する要因はなんと言ってもお客様に提供しているQ・S・Cで決まってくるが、その前にお客様に店の存在を知ってもらわなくてはならない。
いくらよい商売をしていても、店の存在が分からなくては、なかなかお客様は増えないものである。そこで店の視認性を改善することで売上高のアップを図るのである。
この時必要なのが、自店舗視認性評価シートである。

自店舗視認性評価シートの4つのポイント!

◆Point1.自店舗の視認性に関する項目を全て洗い出しする。
まずは、自店舗の視認性に関する項目を全て洗い出すことからスタートである。
項目としては、各種の看板に、懸垂幕やバナー・のぼり、それに夜間の視認性につながるライトアップ等に関することである。現状無くて必要と思われる物についてもリストアップしたほうがよい。今すぐに出来ることと、予算を取ってから実施する項目があるが、大切なことは、自店舗の視認性がどのレベルなのかをしっかりと認識することである。

◆Point2.各項目について、昼と夜の視認性を評価する。
リストアップした各項目について、昼の状態と夜の状態の2回に分けて視認性の評価を行う。それは、昼の視認性は良い状態であったとしても、夜の視認性は全く見えない状態と言うことだってあるからである。

◆Point3.評価に基づいて改善項目を明確にする。
この段階では各項目が、今後改善しなくてはならないのか、現状のままでよいのかを判断することである。
具体的な改善内容については、次の段階での検討となる。

◆ Point4.視認性の改善策を立て、実行に移してゆく。
最後に行うのは、視認性の改善策を具体的に検討し、実行に移してゆくことである。
多額のお金を必要としないでも、すぐに出来ることも沢山あるはずである。そんな、すぐに出来ることから改善を進めてゆくことがなにより大切である。
多くの店長達が、会社がお金を出さないので出来ませんと言うが、自分たちで出来ることもしていない事の方が実は多くある。
このシートで大切なことは、まず自店舗の視認性の弱みを知ることである。
弱みを知ることで、その弱みをいろいろな形でカバーしてゆくことだって出来るのである。

5.自店舗商圏調査シート

この帳票も自店舗を知る上では欠かせないものである。
自店舗がいったいどのような場所で営業しているのかを知ることは、店舗を運営する店長達にとっては、何より大切なことである。
ここでも私は店長達に必ずいろいろと質問をしている。その質問とは、
(1)この店の核になる商圏はどこですか?
(2)事業所やオフィスはどこにありますか?
(3)大学や専門学校、それに幼稚園はどこにありますか?
(4)商店街やショッピングセンターはありますか?
(5)官庁街はありますか?と言った具合である。
この質問に対しても、大変残念であるが多くの店長達が答えることが出来ない状態である。自店舗の商圏を知り、そして自店舗をその地域にとってなくてはならない店にしてこそ、店長としての最大の存在価値が生まれてくることを認識しなくてはならない。
そのために必要になってくるのが、自店舗商圏調査シートである。

自店舗商圏調査シートの3つのポイント!

◆Point1.自店舗の商圏を構成する主たる集客場所を選定する。
まずは、自店舗の商圏を構成している主たる集客場所の選定からのスタートである。
今までに実施したアンケートの調査表があればそれを参考に選定してゆけばよいが、もし無いのであれば、道路や鉄道、それに橋などの状況から判断して、自分なりに考える商圏を設定すればよい。
大切なことは、自店舗を取り巻いている商圏の状況を正しく知ることである。

◆Point2.それぞれの集客場所をさらに分析し、優先順位を決定する。
次に、その設定したそれぞれの集客地に商圏の順番を付けることである。
これが自店舗の1次商圏になり、2次商圏になるのである。
勿論、1次商圏のお客様の来店頻度が高いことは言うまでもないことである。
この商圏とその優先順位を知ることで、どの地域からお客様が来られ、どこの地域からお客様が来られていないかを正しく知ることができる。
この活動が、その後の販促活動とも連動してくるのである。

◆Point3.商圏を知り、今後の重点対策地区を明確にしてゆく。
最後に大切なことは、自店舗の商圏を調査し、商圏状況を知ったことで、今後の活動にいかにして結び付けて行くかである。
何年もその地で商売をしていると、お客様は自分達の店のことを知っているものだと思い込んでしまい、お客様の方から来てくれるものだと考えてしまうが、実際にはお客様の方は勿論のこと、我々もお客様のことを知らないと言った状況である。
この自店舗商圏調査シートは、そんな商売の基本とも言うべき「まずは商圏を知る」と言うことを教えてくれる。

6.Informationシート

最後に紹介するのは、インフォメーション(information )シートである。
営業時間が長い店や、年中無休の店になってくると、なかなか直接的にコミュニケーションが取れないことが発生してくる。
そこで、それをカバーするために文書でみんなにお知らせするためのツールとしてインフォメーションシートを使う。
このツールは、あくまでもコミュニケーションを補完するためのもので、このツールによって全てのコミュニケーションが成立するわけではないことを忘れないでいただきたい。

インフォメーションシートの2つのポイント!

◆Point1.発信者と受信者を明確にする
インフォメーションシートで大切なことは、発信者が誰で、受信者が誰かを明確にすることである。例えば発信者が店長で、受信者は、ホールの人なのか、キッチンの人なのか、それとも店の人全員なのかを明確にすることである。
注意しなくてはならないのは、このインフォメーションシートは個別コミュニケーションツールには適さないと言うことである。
あくまでも、ホール・キッチン別や、ランチ・ディナーと言った相手に対するコミュニケーションが基本であることを忘れないでいただきたい。

◆Point2.サインの記入を徹底する
このインフォメーションツールで大切なことは、発信者と受信者がこのツールを使ってコミュニケーションを成立させることである。
そこで、受信者はこのメッセージを読んで内容を確認したら、そのことの証としてインフォメーションシート下の欄にサインをしなくてはならない。
このサインによって、発信者はそのことが伝わったことを確認するのである。
このサインの徹底を行わない限り、コミュニケーションは中途半端になるので注意しなくてはならない。
前回と今回で各種のマネジメント帳票を紹介したが、まだまだ店舗運営にはいろいろなマネジメントツールがある。どれも、そのツールそのものの目的がある。
大切なことは、それぞれのツール活用の目的を理解し、そして完全に活用できるようになることである。
最初は面倒なことだとは思うが、その面倒なことに挑戦し、完全に使いこなせるようになってくると、店は確実に良い方向へと向かってゆくことを忘れないでいただきたい。
決して、中途半端な使い方や、途中でツールを何度も変えるようなことはしないでいただきたい。それは、そこからは何も得るものが無いからである。
マネジメントツールの活用は大変なことへの挑戦であるが、その大変なことが当たり前に出来るようになってきた時に、店長としての自分の成長と、店の発展が約束されるのである。
※各種マネジメントツールは近代食堂11月号をご参照ください。