店長の仕事は80%が準備業
より良い結果を得るためには、良い計画を作ることである。
その良い計画とは、良い結果を得るための店長の準備業のことである。
ここでもスーパー店長達には、共通した点がある。それは、彼らは決して場当たり的な仕事はしないということである。
彼らは、常に良い成果を得るために、万全な準備をしているのである。
それは、店長の仕事とは80%の準備業と20%の対応業で、仕事の成果が決まることを彼らは知っているからである。
では一体、何を準備することが店長の準備業なのかを考えなくてはならない。
ほとんどの店長達は、何を準備してよいのか、また準備の出来映えとはどのような状態なのかを理解していないために、其の日暮しのオペレーションをしてしまうのである。
その結果、ある日はお客様の数に対して必要以上のスタッフがいて、働くみんなの仕事がなく手待ち状態になったかと思うと、またある日はスタッフが完全に足りなくて全員で店の中を走り回ってお客様の対応をするといった現象になっている。
さらに、日替わりのランチが1時前に切れたりすることも店長の準備業が不足しているために起こる現象である。
では、いったい何をするのが店長の準備業で、その出来映えとは何なのかを今回は考察してゆく。
準備業のスタートは来客数予測
店長の準備業のスタートは来客数を予測することから始まる。
つまり、来週の月曜日には何人のお客様が来店し、火曜日には何人のお客様が来店するのかを予測することである。
これが出来ないことには、何も始まらないのである。
それは、予測した全てのお客様に満足していただくための、店長の準備業がそこからスタートするからである。
それでは、まずどのようにしてこの来客数を予測するかである。
これにはいろいろな方法があるが、私は直近の4週間の曜日別・時間帯別客数実績数値の平均値と、その前年比の推移から当日の来客数の予測を行っている。
もちろん、これにその日の地域の行事や、特別な催し物なども来客数に加味して予測するのである。
準備業の中心は人と食材
来客数の予測が店長の準備業のスタートであるが、この来客数の予測に対して行う準備が人と食材の準備である。
つまり、全てのお客様に満足していただくために、必要な人員の準備と、必要な食材の準備をすることである。
この人と食材の準備が店長の準備業の中心になってくる。
その人の準備とは、採用計画と教育計画から始まり、その日の来客数予測に応じたワークスケジュール表(稼動計画書)を準備することである。
このことが、安定した店舗運営とお客様の満足を得ることにつながるのである。
次に、食材の準備であるが、これは発注とスタンバイ(仕込み)計画のことである。つまり、必要なものを、必要なときに、必要な量だけ準備することである。
これが、人と食材の準備である。
この準備をいかにしっかり行うかで、お客様の満足度も、その後の店の成長も決まってくるのである。
自分が作成したワークスケジュール表(稼動計画書)を見て、その日のオペレーション状況を頭で描きながら、お客様の満足を追及してゆくのである。
20%の対応業
ここで、20%の対応業について説明しておこう。
例えどんなに良い人と食材の準備を行っても、予測した来客数より多くのお客さまが来店されたり、逆に突然の悪天候などで予測をはるかに下回るお客様になる場合がある。
こんな場合には、店長やその時間帯のリーダーの判断力と対応力が必要になってくる。これが20%の対応業である。
この20%の対応業は、店長のみならず、店長に代わって時間帯を任されている時間帯の責任者は全員身に付けなくてはならない。もし、これが80%の対応業であれば、毎日がその場主義の連続になってくるのである。
80:20の法則とは、そんなその場主義の仕事にならないための準備に80%の力を注ぐということである。
私は、店長としてこれだけは絶対にしなくてはならない仕事があるとすれば、それはワークスケジュール表(稼動計画書)の作成だと考えている。
店の責任者として、お客様と会社、そして全ての従業員に責任を果たすことが出来るのが、このワークスケジュール表(稼動計画書)だからである。
そして、ワークスケジュール表を通じて、仕事に挑戦するのである。
ワークスケジュール作成の7つのポイント
ではこれから具体的にワークスケジュール表を作成するためのポイントについて説明する事にしよう。
私は、このワークスケジュール作成のポイントを7つに分類している。
このワークスケジュール作成の7つのPointは、最低これだけは必要という項目で、これ以下ではあってはならない項目である。
もちろん、さらに細かく計画を立てることで、より高いお客様の満足を得ることと、経営のムダを取ることが重要である。
では、具体的に説明してゆくことにしよう。
Point.1 来客数予測
来客数予測については最初に説明したので改めて説明はしないが、この来客数の予測が店長の準備業のスタートであり、これが出来なければ全ては始まらないということは完全に理解していただきたい。
※レベルアップしたら、時間帯毎の来客数の予測にするこことで、さらなる精度を高めることが可能となる。
Point.2 作業割り当て
良いオペレーションを行うためには、お客様の満足に対応するために必要な人員数の確保と、分業とチームワークが取れる作業割り当てが必要になってくる。
できれば、この作業割り当ては時間帯毎に明確にしたほうが良い。その時間に誰が何をするのかが、みんなに分かることでチームワークが良くなるのである。
この時、店長はワークスケジュール表を見て、お客様の満足と従業員の様子が頭の中でイメージできなくてはならない。
そのイメージの内容によっては、作業割り当ての変更をしたり、その当日までに追加のトレーニングを計画しなくてはならないのである。
これを作業割り当てと言う。
Point.3 時間帯人員数
ワークスケジュール表の一番下の段に、時間帯毎のホールとキッチンの合計人員数を明確にするのが時間帯人員数である。
これがあることで、その時間帯のホールとキッチンの人員数が一目で把握できる。
最終的には、時間帯毎の来客数予測と、それに対応できる人員数、そしてその人員のフォーメーションでオペレーションレベルをアップしてゆくのである。
※この時に、一日の計画投入時間を算出し、予測来客数に対して適正に労働時間が使われているかの判断をしなくてはならない。
よく店舗で見るワークスケジュール表には、この一日の投入時間が計算されていなくて、単に線だけが引いてあるワークスケジュール表である。これでは、人件費のコントロールが出来るはずがない。
店長の上司であるエリアマネジャーも、そんな状況なのに計画段階のワークスケジュールのチェックをしない。
それでいて、何時も人件費のことばかり問題にしているのである。
人件費のことを問題にするのであれば、先ずは、計画段階のワークスケジュール表を細かくチェックし、お客様の満足と会社の利益確保の両面を考え、そこではじめて店長と良くコミュニケーションを取ることである。
Point.4 トレーニング計画
お店のオペレーションレベルを高め、お客様に満足をしていただき、結果としての最大限の売上高と最大限の利益を得るためには、働く人達のスキルレベルを高めてゆくしかない。
店は、人で始まり、人で終わる。これが基本である。
しかし、こんな基本的なことが出来ている店長が実に少ない。
人はトレーニングで仕事を覚え、そしてその覚えた仕事によってお客様の満足を得ることができるのである。
そのお客様の満足を得ることが仕事の喜びとなって、そして成長してゆくのである。
そのトレーニングを計画的に行ってゆくために、ワークスケジュール表にトレーニーのトレーニング内容と、そしてそのトレーニーを担当するトレーナーを明確にするのが、4つめのポイントであるトレーニング計画である。
このトレーニング計画が明確になっていることによって、トレーニーも安心してトレーニングを受ける準備ができ、トレーナーの方もそのための準備を怠ることなく進めることができるのである。
ワークスケジュール表にトレーニング計画を明記する理由は他にもある。それは、ワークスケジュール表に明記することで、店で働くみんながトレーニーを応援することができるからである。
一人のトレーニーが成長することは、それだけお客様の満足度が高まり、最終的には店の成長につながることになるからである。
Point.5 インフォメーション
コミュニケーションの基本は、一対一で直接話すことであるが、毎日の営業ではこのワークスケジュール表のインフォメーションを活用することで、確実に全員に同じ内容を伝えることができる。
もちろん、その内容について出来るだけ直接みんなに話すことで、より効果的になってはくる。だからといって書かなくて良いということではない。
書くことで、その日の営業でみんなに何をしてもらいたいのかを事前に考え、まとめるためである。
一番大切なことは、店長自らが店のことを考え、そしてその考えを言葉で表現することである。
内容については、その店独自に考えれば良いことだが、最低でもその日の「日替りランチ」のメニューと目標販売数や本日のセールスメニュー(推奨販売)の連絡、さらには、トレーニングの計画や店長のメッセージは必要である。
Point.6 労働時間実績
労働時間の実績の記入方法については、本人が記入する方法でも、その時間帯の責任者が記入する方法のどちらでもよい。
ここで大切なことは、計画通りの出勤をみんなが行ったかを知ることである。
店の運営で一番大切なことは、勤怠管理と定員管理で、その勤怠管理は、計画通りに全員が出勤し退勤することである。
もちろん来客数の予測が違った場合には、勤務時間の対応も必要になってくる。
しかし、そんなこともこの勤怠管理が出来ていないことには始まらない。
良くない店の共通点は、この勤怠管理と定員管理がほとんど出来ていない。これにはいろいろな原因があるが、その原因の一つにワークスケジュールの不備がある。
ワークスケジュール表には、3つの役割がある。その3つとは、
1. 出勤命令
2. 作業命令
3. お客様の満足と会社の利益の追求である。
つまり、ワークスケジュール表によって、みんなの出勤日と働く時間が明確になっていて、かつその日の仕事の内容がはっきりしていていることである。
これによって、各人の責任感覚が強くなってくるのである。
それは、一人ひとりの役割が明確になっていることで、みんなの店での存在価値を知ってもらうためである。
次に、店長としての責任を果たす上での、お客様の満足と会社の利益の追求である。
これが作業割り当てと適正労働時間の投入である。
この両面を常に考えるのが、店長としての責任になってくるのである。
Point.7 経営管理実績
最後に当日の実績を経営管理に全て記入し、一日のワークスケジュール表が終了することになるが、店長はここからもう一つ大きな仕事が待っている。
それは、全ての記入が終わったワークスケジュール表から結果を分析し、次への改善に結び付けることである。
結果分析は、大きく分けて3つのことを行わなければならない。
その3つとは、
1. 店長としての準備業には問題はなかったか?
2. 経営実績の数値に問題点はないか?
3. 当日の対応業に問題はなかったか?
以上の3つである。
準備のための計画からスタートし、そして当日の対応業、さらに結果分析までの一連の作業がワークスケジュール表である。
ここまでしなくてならないのかと思うが、ここまでするからこそ店が繁盛するのである。そういった意味では、ワークスケジュール表は店長にとっての仕事の挑戦状であり、店長の仕事の軌跡でもある。
最終的には実践での行動力
店長としての準備業がいかに重要かは理解できたと思うが、良い成果を得るためにはさらなる努力が必要になってくる。
もちろん、計画以上の結果になることはないが、計画通りの結果を出すためには実践での行動力がものを言う。
つまり、計画した通りに実践する力があるかどうかで、結果が決まってくるということである。
例えどんなに良い計画であっても、実践での行動力が伴わなければ、結果はゼロに等しいものに終わってしまう。
最終的には成果の100%は店長の実践行動で決まるのである。
そのためには、なんと言っても自分自身のスキルを高めることである。
単にスキルと言っても、それは新たな理論を武装することではない。
勿論新たな理論を武装することも重要であるが、理論だけ武装した所で、スキルが身に付くわけではない。スキルとは、理論と実践が合体したときにはじめて身に付くものである。
よく理論武装している人と話すが、理論だけの人は実体験が少ないために言葉に重みが感じない。
そのことは、その人のお店に行けばよりハッキリとする。
言っていることと、やっていることが伴っていないのである。
理論と実践が合体してのスキルであることを忘れてはならない。
繁盛店への道は険しいかもしれないが、そんな努力をするからこそ、お客様の満足を得ることができ、そしてあなたの店を繁盛店へと導いてくれるのである。
以上