損益計算書が仕事の結果
店長には「お客様の満足を得て」、結果としての売上高と利益の予算を達成する責任がある。
つまり、いろいろな取組みをしても、その結果が数値として出なければ、その取り組みは成果を挙げたことにはならないということである。
オペレーションラインの店長としての責任は、なんと言っても数値の請負である。
それは、予定された売上高と利益の達成であり、店舗のさらなる成長である。
数値責任のない店長など存在しないし、もし数値に責任が無いというのであれば、それは単なるお店の留守番にしか過ぎない。
お店で行っている全ての活動も、最終的には全て数値として出てくる。
そういった意味で、私は損益計算書が店長にとっての通知簿といっている。
その損益計算書は、一番上が売上高で一番下が利益である。
そして売上高は、来客数×客単価で決まってくる。
だからこそ店長は、来客数を増やすために「お客様の満足を得る良いオペレーション」を目指しているのである。
良いオペレーションがお客様の満足度を高め、そして来客数を増やし、結果としての売上高を高めてくれるからである。
次に、店長はお客様の満足度を高めながら利益を確保してゆくのである。
単なる経費削減ではない。お客様の満足を得ながら、適正に経費と使うことで得ることの出来る利益である。これが、コストコントロールである。
そのコストを大きく分類すると①原材料管理(フードコストコントロール)②人件費管理(レイバーコストコントロール)そして、③その他の経費管理(セールスコストコントロール)である。
お客様に満足していただきながら、同時にこの3つのコストを管理することが店長にとってなにより重要な仕事なのである。
最大限の売上高と、最大限の利益の確保とは、そんな良いオペレーションと、良いコストコントロールの結果得ることの出来るものである。
そこで今回は、3番目のその他の経費管理(セールスコストコントロール)と最終的な店長の成績表になる損益計算書について説明してゆく。
損益計算書と聞いた途端に、すぐに難しく考え込んでしまう人がいるが、損益計算書は何も難しくない。足し算と引き算しかない数表である。難しいのはその数値が店舗のどのような作業からなっていて、今後何を変えなくてはならないかと言う、数値と作業の関連性を明確にすることである。
そして、このことが理解できればオペレーションと数値の関係が分かり、取組んだ課題と数値を常に確認できるようになってくるのである。
がんばれ加藤店長!Part3
今回は、久しぶりに加藤店長から登場である。
加藤店長の店は一体どのようになっているだろうか?
「がんばれ加藤店長!」
~Lets Challenge スーパー店長への道~
損益計算書
まずは、損益計算書を理解できるようにならなくてはならない。
損益計算書は、大きく経常損益の部と特別損益の部に分類される。
また経常損益の部は、さらに営業損益の部と営業外損益の部に分かれる。
これは一般的な損益計算書の説明であるが、こんな説明が余計に損益計算書を難しくしている。しかし最初にも言ったとおり、何も損益計算書は難しいものではない。
売上高から経費を引いて、最終の利益を明確にしたものが損益計算書である。
つまり、売上-経費=利益(100-70=30)と言うことである。
このことを、縦にしたものが損益計算書だと考えればよいのである。
損益計算書には必ず各経費の売上比率が出ていると思うが、各経費の売上比率と利益率を足すと必ず100になることも忘れてはならない。
つまり経費+利益=売上(70+30=100)と言うわけである。
特に店長達にとっては、自らの力で各経費を管理できる店長管理可能利益までを、責任数値と考えることがよい。
それぞれの会社毎に勘定科目の仕訳が若干違っていると思うが、基本は同じである。
損益計算書は一度理解してしまえば、後は多少の勘定科目が違っていてもそれは大きな問題ではない。
店長が常に追い求める数値は、最大限の売上高と最大限の利益の追求である。
損益計算書の一番上が売上高で、一番下が利益である。
一番上の売上高を高めるためには、来客数を増やすか、客単価を上げることでしか実現できないが、店が成長し続けてゆくためにはなんと言っても来客数を増やし続けることがなにより大切である。
そのために店長は、「お客様の満足を得る良いオペレーション」を日々行ってゆくのである。
次に一番下の利益を高めるには、もとになる売上高を高めるか、各経費をコントロールすることでしか実現できない。
経費の単なる削減も、一時的には利益を高めるとこにつながるが、そこには将来への発展性が生まれないことを忘れてはならない。
一番良い状態は、売上高を高めながら、各経費をコントロールすることである。
これが最大限の売上高と、最大限の利益の追及になってくるのである。
それでは、各経費のポイントについて述べるとしよう。
原材料管理(フードコストコントロール)
店で一番大きな経費はなんと言っても材料費である。売上高の約3割から4割近くを占めている。大きな経費と言うことはそれだけ大きなロスも発生する可能性があり、そのロスが利益の損失につながることになる。
そこで、店長達が管理しなくてはならない経費の一番に材料費がある。この材料費管理のことをフードコストコントロールと言う。
この材料費のロスの発見と、ロスの退治については7月号で今一度確認をしてもらいたい。
人件費管理(レイバーコストコントロール)
店によっては材料原価よりも人件費が高い所もあると思うが、やはり売上高の約2割から3割近くを占める経費が人件費である。
人件費も大きな経費になっている分、それだけムダ・ムラ・ムリが発生しやすいということである。
この人件費のムダ・ムラ・ムリの発見と退治についても、同様に8月号で確認してもらいたい。まずは、この原材料費管理と人件費の管理を正しく出来るようになることで、売上に見合う最低限の利益は確保できるようになってくる。
その他の経費管理(セールスコストコントロール)
フードコストとレイバーコストで売上高の約60%近い経費になってくるが、店長が管理しなくてはならい経費には、店によって多少の違いはあるが、販売管理費として売上高の約10~13%近い経費がある。
これも店長のコストコントロール力で、平気で2~3%近い違いが出てくる。
今回紹介する店長が管理しなくてはならない経費は10の経費項目になる。
その10項目とは以下の通りである。
1) 水道光熱費(ユーティリティー)
2) 客用消耗品費
3) 店用消耗品費
4) ユニフォーム費
5) 食器費
6) リネン・衛生費
7) 通信費
8) メンテナンス費
9) 販売促進費
10) 雑費
この10の項目は店長が管理しなくてはならない経費項目で、店長しか管理できない項目なのでよく理解してもらいたい。
では具体的に、一つひとつのポイントについて述べることにする。
1)水道光熱費(ユーティリティー)
フードコストやレイバーコストと比較すると小さな経費であるが、経費のムダの発生金額では同様なロスが出ている店もある。
水の出しっぱなしや、不必要な電気の点けっぱなし、それにガスの無駄遣いなど店では沢山のムダが発生している。
特にエアコンの温度設定などによる電気の無駄遣いも多くある。
一番多い例では、働く自分達の都合で温度を設定しているために、夏などはお客様には寒い思いをしてもらい、会社には多くの経費の無駄遣いをしている状態である。
これでは本末転倒であるが、こんな店も実は沢山ある。
赤字で大変だと言いながら、自分達で経費の無駄遣いをしている店である。
また、売上が伸びないと言いながら、自分達でお客様を減らしている店や、利益が少ないと言いながら自分達で経費の無駄遣いをしていたのでは、何時までたっても店が繁盛することはない。
良い店は共通して各経費もキチンと管理できているものである。
そこで、この水道光熱費の経費についても具体的な店での取組みが必要になってくる。
はじめは、節水・節電・節ガスといった店全員の意識改革からなるが、次には具体的に不必要な水道は止める、不必要な電気は消すといった実行での活動が重要になってくる。
水道の蛇口や、電気のスイッチのところに節水シールや節電シールを貼るのも一つの手である。
また、毎日の使用量を把握できる仕組(休憩室にグラフで表現する)こと等で、使用量の異常に気づくと同時に全員の意識改革も進んでくる。
※毎日のメーターチェックによる毎日の使用量の把握である。
2)客用消耗品費
客用消耗品費とは、お客様が使うおしぼりやナプキン、それにお箸やテーブルマットといったものである。
一つひとつは大きな金額ではないが、ちりも積もれば山となるである。
それに、店のモラルにも係わってくる。
店で一番見かける光景は、お客様が使うナプキンやテーブルマットをメモ代わりに使っていたり、おしぼりを平気で従業員が使っていたり、またお客様のお箸を従業員が使っていることである。
他にも、お客様用のマッチを従業員が平気で使っている店もある。
こんなお客様の使う消耗品に対するコスト意識が全てのコスト管理に出てきているのである。まずは、そんな問題から取組まなくてはならない。
3)店用消耗品費
店用消耗品費には、厨房で使うフライパンやお鍋や包丁といった備品から、店内の清掃道具といった物まであるが、コスト管理がズサンな店舗に共通する問題は、整理整頓ができていなくて物を大切にしていないことである。
だから必要以上に物が多く、店舗は雑然としている。
物が多くあると、まだ十分に使えるものも粗末に捨てている。そしてまた発注をしているのである。こんなコスト感覚が店をダメにしてゆくのである。
物を大切にしてこそ、美味しいお料理や良いサービスができることを忘れてはならない。
4)ユニフォーム費
ユニフォームは、買い取り方式やリース方式によって経費の計上に若干の違いがあるが、コスト感覚的な面では、店用消耗品費となんら変わりはない。
やはりズサンな店舗は、更衣室に山のようにユニフォームが散乱している。
ユニフォームと同様に靴の管理が出来ていない店舗も多い。
貸与している店とそうでない店があると思うが、従業員の倍以上の靴が更衣室にある店も良く見かける。
人が定着しない店などは、そのほとんどが新品の状態で放置されている。
そんな状態だから、人が育たない、人が定着しないのである。
コスト感覚とは、そんな店の整理整頓から始めなくてはならないのである。
5)食器費
使っている食器の単価にもよるが、食器費は店のオペレーションの作業レベルと連動している。
オペレーションの基本は、①正確であること②早くできること③丁寧に出来ること、この3つである。
この3つがオペレーションの基本作業として身に付いていれば食器は丁寧に扱われ経費としての食器費が高くなることはない。
問題はオペレーションが雑な店、つまり食器を丁寧に扱わない店である。
こんな店が食器の破損率(ブレッケージ率)が高く、結果としての食器費が高くなっているのである。真のホスピタリティーとは、人に優しく、そして物にも優しい状態のことである。
6)リネン・衛生費
ユニフォームのクリーニング費や、店で使う各種の洗剤も使い方一つで大きな経費コントロールが出来る。
クリーニングに出す必要のない物までクリーニングに出している店や、洗剤を希釈しないで使っている店は、共通してこのリネンと衛生費が高くなっている。
私は出来る限り、ユニフォームは自己管理に持っていったほうが良いと考えている。
それは、ユニフォームを自己管理にすることで生まれるアピアランスやクレンリネスに対する意識と、そしてコスト意識である。
洗剤については、ほとんどの店では希釈前の洗剤だと思うので、大きなポリタンクを用意し、その中に希釈した洗剤を入れて使う習慣を店に根付かせることである。
オペレーションと数値が連動するとは、まさしくこのようなことである。
7)通信費
通信費のほとんどは店長の電話代である。店が遠隔地の場合は別として、同じ地域で平気で2倍も3倍もの通信費を使っている店をよく見かける。
特にお客様への販促をしているわけでもなく、単なる店長同士の長電話である。
こんな時間があるのであれば、お客様と従業員へのコミュニケーションに当てるべきである。これは私の経験からであるが、通信費が2万円以上は店長が何時も電話している状態だと判断している。
仕事で必要なときに電話をする。これが通信費である。
8)メンテナンス費
店が建ってからの年数にもよるが、店の維持管理の状態でもメンテナンス費は大きく違ってくる。特にエアコンや冷蔵庫のフィルターの掃除をしないことによる本体の故障などは、店の日ごろの維持管理の状態からくる。
使い方ひとつで、基本的に7年間使用になっているものが、10年間使えたりもするし、逆に5年しか使えなくなってしまう場合もある。
そんな日ごろの維持管理状態でメンテナンス費は大きく違ってくるのである。
もう一つは、各設備に関する知識がないために、故障もしていないのに業者を呼んでしまい、出張費を支払っているということもある。
そういった意味では、各設備に関する最低限の知識と維持管理に関する日々の業務をしっかりと理解しなくてはならない。
メンテナンス費とは、そんな知識と具体的な取組みによって大きな差が出る経費なので、しっかりとした店長の取組みが必要になってくる。
9)販売促進費
本来は、商品が販促、サービスが販促、そしてクレンリネスが販促でなくてはならない。しかし今の大競争時代では、店を販促にしながらもいろいろな活動によってお客様に喜んでいただけるようにしなくては勝ち組に入ることはできない。
キャンペーンやイベント、それにチラシやクーポン券の配布といったことである。さらには、ヘビーユーザーに対するダイレクトメールといった販促もある。
販促に関しては、これからの本編で詳しく述べるとするが、ここでは一般的な目安としての販売促進費の売上比率についてだけ説明する。
昔と違って販売促進の効果も薄れてきている現在では、費用対効果を考えると売上に対する販促費(割引分も含めて)は、最大で売上比の2%までである。
これ以上になるとほぼ費用の回収は難しくなってくる。もちろん地域差はあるので全てではない。ベストな売上比率は1.5%~1.8%を目安に活動をしたほうが良い。
10)雑費
雑費にもいろいろあるが、地域活動の協力や従業員の活性化策に対するものであれば、これは逆に使ったほうが良い。
お金は活きた使い方をすれば、必ず形を変えて店に戻ってくる。
それは、お客様の満足と働く従業員のやる気の向上である。
そんな活きたお金を使える店長こそが、お店を繁盛店へと持って行くことが出来るのである。使う必要があるお金は使い、使う必要のないお金は使わない。これがコストコントロールの基本である。
オペレーションと損益計算書
食材を正しく取り扱えること、そして人を活かせること、さらには建物を含めた店の設備を管理できることは、全てお金を管理する事につながってくる。
と言うことは、オペレーションの結果は、全て損益計算書に金額になって表されるということになる。
私が、損益計算書が店長の通知簿と言っているのはそういったことから来ているのである。そのためには、数値とオペレーション、つまり結果の数値と日々の作業との関連を理解しながら、数値から問題点を発見し、そして日々の作業を改善することでその数値を良い方向に変える努力が必要である。
または、作業から問題点を発見し、その作業を見直すことで、結果の数値を変えることも重要なことになってくる。
日々の店長業務では、計数管理(予算比や標準比・売上比)といったことでも、最終成績は金額管理による損益計算書になってくるのである。
つまり、売上と利益と言うことである。この売上と利益を最大限に高める店長こそが、店を繁盛店へと導いてゆくのである。
以上