時代はサバイバルな競争時代
大変厳しい時代であるが、しかし全てのホテルや全てのお店が悪いわけではない。
こんな時代でも、業績を伸ばしているホテルもあり、そしてお店もある。
確かに、業績の悪いホテルやお店の方が圧倒的に多いと思う。しかし、それは経営者のスタンスで仕事の取組んでいる店長や支配人がいかに少ないかということでもある。
業績の悪いホテルやお店の店長・支配人達は、業績が良くない理由ばかりを何時も探しているのではないか?
悪い理由は探せばいくらでもある。
景気が悪い。競合店が多い。失業率が高い。時代が悪い。ひどい所になると、言うに事欠いて従業員のやる気がないことを理由にしている。
自分がやる気がないことを、従業員の理由にしているのである。
こんなことで、今の時代を乗り切っていけるはずがない。
前回も述べたが、大競争時代は需要より圧倒的に供給する側が多い状態である。
つまり、時代はサバイバルな競争時代である。
サバイバルな競争時代とは、食うか食われるか?倒すか倒されるか?を意味する時代でのことであるが競争する相手は、競合するホテルや競合するお店ではなく、真の競争相手はお客さまの満足である。
お客さまの満足を自分達の力で勝ち取ることで、この時代を生き残ってゆくのである。
だから物まねではなく、自分達のターゲットにしているお客さまに対して、自分達の強みを最大限に発揮した独自性がなにより大切になってくるのである。
つまり、お客さまの満足との競争に、どれだけ不断の改善ができるか否かが、お客さまから選ばれるホテルになり、サバイバルな競争時代に勝つお店になるのである。
そんな時代に、業績が悪い理由を探してどうするのか?
悪い理由を探す前に、どうしたらお客さまにもっと喜んで頂けるか、どうしたら売上がもっと上がるか、どうしたら利益がもっと上がるか、どうしたら従業員がもっとやる気をだしてくれるかを常に考えなくてはならない。
そうしないと、自分の城も自分で守れない店長や支配人になってしまう。
今の時代、たとえ雇われている店長や支配人であっても、自分の城は自分で守らなくてはならない時代である。
そこで今回は、店長や支配人達が日々行っている仕事の本質について述べることにした。(この先この仕事のことを店長マネジメントと言う)
店長や支配人は、いったい日々何を目標に仕事をしているのか?
そして、それは具体的に何をすることなのか?
お客さまに、2度・3度と来て頂くためには、何をしなくてはいけないのか?
従業員の力を結集するとは、いったいどのようなことなのか?
そんな、店長や支配人の本当の仕事とは、いったい何か?
つまり、店長とは何ぞや!支配人とは何ぞや!と言うことである。
このことを追求してゆくことが、店長マネジメントを進化させ、あなたと、あなたのホテルやお店を発展させてゆくのである。
今回は、その全体像である店長マネジメントの中核について説明する。
店長や支配人は提案家
店長や支配人は、常に現場で働いている訳であるから、会社や組織の中では、誰よりもお客さまのことと、そして働く従業員のことを知っているはずである。
だから、お客さまや従業員が何を望み、お客さまや従業員が何に対して不満を持っているのかを、いろいろと見て聞いているはずである。
この、お客さまや従業員の望みや不満を的確に判断し、そして、それらの問題を解消することに全力を尽くさなくてはならないのである。
業績の良いホテルやお店の店長や支配人には、実はそのことが出来ているのである。
だから、彼らは何時もお客さまの満足と、そして、従業員のやる気のことを中心に考え行動しているのである。
そんな、経営者としてのスタンスで仕事に取組んでいるからこそ、会社や組織に対してもどんどん提案できるのである。
私は店長マネジメントには、提案家としての重要な仕事があると考えている。
常に「かご一杯」の提案があるぐらいが普通な状態である。
それは、それだけ見て聞いて、そして常に仕事について考えている証なのである。
うちの会社は、そんなことは到底出来ないと考えているような店長や支配人では、いつまで経っても業績の回復などできない。
本当は何も提案がないのかもしれない。
もし本当に提案一つできない会社で、業績が悪いのなら、早くその会社を辞めて、提案がどんどん出来る、そして自らの力を試せる場所に移ることを勧める。
業績が悪く、もしそのホテルやお店が無くなってしまった場合、本当に困るのは、数少ないかもしれないが、常連のお客さまと、そしてそこで働いている従業員である。
だから、提案も命がけである。
もし提案したことが上手く行かなければ、結果について責任を負うぐらいの覚悟も必要である。しかし、そんな店長や支配人の一生懸命な取組みが従業員を動かし、そしてお客さまを感動させ、結果の数値を動かすのである。
そんな提案家としての、店長・支配人に先ずはなることである。
価値観を高める(Value)
お客さまに満足して頂き、また次もご来店してもらうためには、自分達のホテルやお店の価値観を高めなくてはならない。
お客さまは支払った金額に対しての価値観を常に計算しているのである。
価値観があれば再来店してくれるであろうし、価値観がなければ、もうご来店されることはないのである。
お客さまは、支払った金額に対して、受けた品質Q(クオリティー)や接客S(サービス)、そして、掃除C(クレンリネス)や雰囲気A(アトモスフィア)を割った結果からはじき出し、そのホテルやお店の価値観を決める。
例えば、支払った金額が100に対して、受けたQ・S・C・Aの状態が120だとすると、お客さまの価値観は120%と言うことになる。
これがお客さま満足度になり、120%の満足度を提供できていることになる。
これであれば再来店は間違いないであろう。
よく来客数のことを人気のバロメーターというが、来客数の前年比が120%であるとするならば、そのホテルやお店は価値観があり、人気があるということになる。
問題は、その数値が90%であったり、80%であったりする場合である。
では、いったいどのようにしたら、この価値観が上がるのであるかを考えなくてはならない。それは、それほど難しいことではない。
ひとつは、価格を下げることで価値観を高めることである。勿論、この時Q・S・C・Aは落としてはならない。
価格を下げて、提供するQ・S・C・Aも下げたのでは結果は同じことである。
これだと一時の売上は取れても、直ぐに元の状態に戻ってしまう。
デフレ競争で、価格を下げる体力勝負に出ている大手外食企業もあるが、同時にQ・S・C・Aも下げる結果になり、業績が良くない所もかなりあるようである。
業績が良くない理由には勿論それ以外にも沢山あると思うが、お店に行っても単に安いだけではお客さまは満足しないものである。
現に、安いからといって、さんざん待たせたり、粗悪な商品を買わされたのでは、よく言う安物買いの銭失いである。
これは私の個人的な意見であるが、ばらまきによるクーポン券や割引券による実質的な値下げもあまり感心しない。
これには、いろいろな異論もあると思うが、得をするお客さまと損をするお客さまが存在するとこ事態問題だと思っている。
平日と日祭日の値段が違うのも同じである。
これらは全て、売る側の論理で商売しているのである。
自分達が売りたいものと、お客さまが買いたいものは違うのである。
その日に行くと得をし、次の日にいくと損をするようなお店で繁盛するお店などありえない。お客さまは何時も得をするから、また行きたくなるのである。
そんなお店こそが、真の繁盛店になるのである。
もし価格を下げることで価値を高め、業績の回復を図ろうと考えるのであれば、一時的なスッポト販促ではなく、自分達が最大限にできる適正価格に設定することと、最低でも今のQ・S・C・Aは維持しなくてはならないことを覚えておいてほしい。
では、次に価格を下げないで価値観を高める方法である。
つまり、お客さまに提供するQ・S・C・Aのレベルを上げることで価値観を高めるやり方である。
これは、店長や支配人達が直ぐにでもできることで、店長や支配人が日々しなくてはならない最重要な仕事でもある。
経営理念を形で表現したものがQ・S・C・Aで、そのQ・S・C・Aを最大限に表現する店長や支配人の仕事がオペレーションと言われるものである。
このQ・S・C・Aのレベルのことをスタンダードと言うが、このスタンダードを毎年上げることが、そのホテルやそのお店が発展する基本になるのである。
マネジメントの2本柱
そうすると、店長マネジメントの1番は、良いオペレーションをすることで、お客さまに提供するQ・S・C・Aのレベルを最大限に表現することである。
Q・S・C・Aのレベルが高ければ高い程、お客さまの満足も高くなるということである。 店長や支配人達の提案も、実はこのQ・S・C・Aのレベルを高めるためのものでなくてはならないのである。
価格を据え置きながら、Q・S・C・Aレベルを高めれば、勿論お客さまの満足度は高くなるが、ここでひとつ問題がある。
それは、収益とのバランスである。
これは、スタンダードレベルと生産性(効率)レベルを表したものである。
NO.1は、スタンダードレベルを落として、生産性(効率)を高める。
NO.2は、スタンダードレベルは同じ状態で、生産性(効率)を高める。
NO.3は、スタンダードレベルは高くしたが、生産性(効率)を下げる。
NO.4は、スタンダードを高めながらも、生産性(効率)を高める。
勿論、お判りの通りNO.4がベストである。
NO.4は、スタンダードを高めることで、成長性を上げ、生産性(効率)を高めることで、収益性を上げることができているのである。
これは、スタンダードレベルを上げてゆく時の基本原則であり、最低でもNO.2レベルの取組みが必要である。できれば、NO.4レベルでの不断の改善が行えるようになるとよい。店長や支配人にとっては、成長性と収益性がなにより大切な数値であることを忘れてはならない。
いくらQ・S・C・Aレベルが高くなっても、結果としての収益性が悪化すれば、商売としてみれば失敗である。そこで、店長や支配人達に必要になってくるのが、売上高から利益を決定する経費(コスト)のコントロールである。
売上-経費=利益と表すように、いかにして売上を高め、いかにして経費を抑えるかで、結果の利益が決まってきてしまうのである。
つまり、店長や支配人のマネジメントの2番目は、売上高に見合う経費(コスト)をコントロールすることで、適正な利益を確保することである。
売上高が成長性で、利益が収益性である。
店長や支配人の仕事は商売そのものである。
本来、商売とは儲かるものと決まっている。もし、儲かっていないのであれば、それは商売でないということである。
儲からないということは、簡単に考えれば、売上が少なくて儲からないのか?経費(コスト)を掛けすぎて儲からないのか?のどちらかである。
売上より経費が多い状態であれば、これが赤字である。
経営にはバランスが必要である。それは売上と経費のバランスである。
店長や支配人の仕事は、よく言われる「入りを図り、出を制す」である。
その売上高(入り)を決定する要因が、オペレーションで、利益(出)を決定する要因がコストコントロールである。
このオペレーションとコストコントロールこそが、店長や支配人のマネジメントの中核になってくるのである。その他の業務は、全てこのオペレーションとコストコントロールを高めるためのものである。
マネジメントと考えると難しく考え込んでしまうが、何も難しく考える必要は無い。
それは、お客さまに満足していただき、その結果として売上高を高め(入りを図り)、そして売上高に見合う経費をコントロール(出を制す)ことで適正な利益を確保することである。
言葉をかえて表現するならば、良いオペレーションを行うことで、店舗の成長性を高め、良いコストコントロールを行うことで、店舗の収益性を高めることが店長や支配人の仕事になってくるということである。
次回は、この店長マネジメントのひとつの柱である「良いオペレーション」について、いかにして高めるかと言うことで考察するつもりである。
以上