「お客さまは来なくて当たり前」この考え方が基本
前回は、顧客創造のためのマーケティング活動の中でも店長・支配人がしなくてはならないプロモーション活動の店内活動について説明しました。
それは、来ていただいたお客さまに今一度お店に足を運んで頂くための活動で、店舗オペレーションと連動した形でのプロモーションである。
基本的な考え方は、この「お客さまは来なくて当たり前」と言うところにある。
そして、もし来ていただいても、「2度・3度来なくて当たり前」と言う考えの下、2度目のご来店、そして3度目のご来店を頂くための活動が店内活動のスタートになっている。
この考え方が、基本的な考え方であり、全ての仕事のスタンスでもある。
こんな厳しい考え方が、店長・支配人を成長させ、そして、あなたのお店やあなたのホテルを発展させてくれるのである。
そこで今回は、来なくて当たり前のお客さまに、いかにして1度目のご来店をして頂くかのアプローチとなる店外活動について説明することにしよう。
ここで、今一度認識しなくてはならないことがある。
それは、自分達は毎日毎日自分のお店やホテルで働いているから、お客さまはお店のことを知っていて当たり前、そして来て頂いて当たり前と言う考えについついなってしまうが、本当にお客さまがお店の存在を知っていて、価値のあるお店やホテルだと知っていれば、今頃あなたのお店やあなたのホテルは大繁盛店になっているはずである。
勿論、お客さまに提供している価値に問題がある場合は論外である。
その場合には、今一度マーケティングのスタートであるスタンダード(Standard)と価格(Price)の関係について見直してみる必要がある。
これからお話しすることは、自分達の商品に自信があり、そして、十分にお客さまにご納得頂ける満足感を、一人でも多くのお客さまとなる可能性のある人に知っていただくための活動である。
この考え方が、プロモーションにおける店外活動である。
真の店外活動とは
繰り返しになるが、店外活動のスタートは、お客さまに十分にご納得いただける満足感を、一人でも多くのお客さまとなる可能性のある人に知っていただくために打って出てゆく活動である。
それは、いくら高い価値を提供しているお店であったとしても、それをお客さまに知っていただかない限りは、お客さまからは黙っていても来ていただける時代ではないからである。
折角良いものを持っているのに売れていないお店の共通点も徹底した待ちの商売になっているからである。だから、一生懸命に努力しても、なかなか売上高が成長基調にならないのである。
その理由は、「お客さまはお店を知らなくて当たり前」、「お客さまはお店に来なくて当たり前」と言う考え方で商売をしていないからである。
そこで、お客さまに知っていただく努力と、お客さまに来ていただく努力をしなくてはならないのである。
これが、真の店外活動と言うものである。
そんな努力が、あなたのお店やあなたのホテルを繁盛店へと導いてくれるのである。
まずは、このことをしっかりと理解しなければならない。
店外活動の理解を深める
今までのことが理解できても、実践行動でこのことが行えるか、となると、これがなかなか出来る店長・支配人は少ない。
例えば、一つの事業所にご挨拶に行く場合、1回行ったのも、10回行ったのも同じ事業所訪問には変わりはないが、知らなくて当たり前、来なくて当たり前のお客さまにお店に足を運んでいただくわけだから、1回挨拶に行ったからといって、それでご来店いただけるものではない。
繰り返し、繰り返し訪問することで、お客さまの方も「それじゃ一度行ってみるよ」と言ってくれるのである。
私の知る限りでは、ほとんどの店長や支配人は、各事業所に1、2回行って、「事業所訪問をしても、なかなか成果が出ない」と嘆いている。
当たり前である。
1、2回行って多くのお客さまにご来店いただけたら、今頃不振店などないだろうし、全てのお店が大繁盛していること間違いなしである。
競合各社も大変な努力をしている訳だし、自分達だけが努力している訳ではない。
そうすると、それ以上の努力をしないと結果が出ないということである。
しかしこの努力が、自らの力でお客さまを創ることになるのである。
この喜びこそが、真の店長・支配人になってゆくのである。
そして、そのお客さまがご来店していただいたときの喜びが、お客さまを本当に大切にするホスピタリティーマインドに変化した時、はじめて店外活動の意味を理解できるようになってくるのである。
基本的なツールへの考え方
ではここで、店外プロモーションの基本的なツールについて説明することにしょう。
今一度確認するが、店外プロモーションの目的は、自店舗の商圏にアプローチすることで、新たなお客さまを開拓し、自店舗への来店を促すことである。
つまり、知らなくて当たり前、来なくて当たり前のお客さまに、一度目のご来店を頂くための活動になる。
これから紹介するツールは、一度は使ったことがあるものばかりだと思うが、この知らなくて当たり前、来なくて当たり前と言う考えに基づいて活動すると、そのツールの使い方も成果も大きく違ってくる。
例えば、一般的なツールとしての折り込みチラシがあるが、チラシのコピーや内容などの工夫ひとつで、折り込みチラシ期間中の売上の伸び率が結果として10%以上違ってくる。
私は、チラシは1秒の勝負と言っている。
つまり、1枚のチラシを最初に見ていただく時間が平均で1秒だということである。
特に、週末の土曜や日曜などは何十枚と言うチラシが入り、そのほとんどが最初の段階でゴミ箱入りになっているのである。
それなのに、売り手の論理で多くのことを載せている。
スーパーや百貨店などのチラシと違って、レストランやホテルチラシで大切なことは、知らないお客さまに先ずは知っていただくこと、そして、来て頂いたことのないお客さまに一度足を運んでいただくことである。
そのためには、自分達のお店の良さを一目で分かっていただけるようなアトラクティブな、つまりお客さまにとって来店したくなるようなコピーでなくてはならない。
私の事務所は場所柄、まわりがホテルとレストラン群なので、毎日のように沢山のチラシが入ってくるがほとんどは、「あれもこれも」で盛りだくさんである。
たぶん作った人も全部読んだことがないのだろうと思うが、1枚のチラシを全部読むのに15分以上かかるものも中にはある。
チラシは、「最初の1秒で選んでいただき、そして1分で読める」これがベストだと私は提唱している。
この話は、まだまだ先が続くのでこれぐらいにし、ツールの話に戻ることにしよう。
今話したチラシもその一つであるが、その他にはクーポン券の配布やダイレクトメール、それに事業所訪問やサークルへの挨拶、さらには、インターネット等を活用したプロモーションまである。
今回は一般的なツールについて説明するが、プロモーションの店内活動、店外活動共に重要なことは、その活動によって来られたお客さまの期待を裏切らないことである。
折角多くのお客さまに来て頂いても満足する対応が出来なければ、その販促が逆効果になってしまうので注意しなくてはならない。
特に土曜日や日曜日といった多くのお客さまが来店するときには十分な準備と対応が必要になってくる。
万全を期してお客さまをお迎えすることが出来なければ、沢山のお客さまに来て頂いても、そのお客さまの満足を得ることが出来ず、結局販促後の売上高が販促前の売上高を下回ってしまう恐れすらある。
そういう意味では、プロモーション活動は、成長へのチャンスを呼んでもくれるが、逆にお店をマイナスにもってゆくこともあることを忘れてはならない。
店外販促ツールの種類
今回紹介するプロモーションのツールと活動は、全部で7つの項目である。
その7つの活動とは、
1. チラシ販促
2. ポスティング活動
3. 事業所訪問
4. 学校まわり
5. 街頭でのクーポン配布
6. 地域活動
7. 店舗視認性である。
では、一つひとつ具体的に説明してゆこう。
1. チラシ販促
・ 先ほども説明した一般的に行っているチラシ販促である。特徴は、一度に広くターゲットとなりうる地域に対して、メニューの紹介や割引クーポンで、お客さまの来店を促すことができるものである。
・ ポイントは、コピーや企画内容には十分な検討が必要である。特に競争が激しい地区では自分達の強みを前面に出さないと、他のチラシに埋もれてしまうことがあるので注意しなくてはならない。
・ また、地域によっては効果性にバラツキがあるため、配布日等は十分に検討する必要がある。
2. ポスティング活動
・ 挨拶文に、メニュー紹介やコーヒー券などをつけて、商圏内の団地やマンションのメールボックスに投函する販促である。
・ ポイントは、主にファミリー層をターゲットにした内容にすると効果的である。
・ 本来は、一軒一軒ご挨拶にお伺いした方が良いのだが、今の時代、場所によってはなかなか難しいところもあるので訪問活動には注意しなくてはならない。
3. 事務所訪問
・ 商圏内の事業所や商業施設等への挨拶まわりを兼ねた販促活動である。
・ ポイントは、繰り返し、繰り返し訪問することで、お客さまとなりうる可能性のある人と親しくなることである。
・ この時、ランチメニューの紹介や、当店自慢の商品の「おためしクーポン券」等をお渡しすることも忘れてはならない。
4. 学校まわり
・ 学校といっても、幼稚園から大学・専門学校まであるが、ここでは、幼稚園と大学・専門学校への販促活動である。
・ ポイントは、幼稚園であれば、ぬりえや夏休みの体操カード等をツールとしながら、挨拶を兼ねて訪問することである。この時、お店の案内とぬりえを掲示する旨を忘れてはならない。
・ 専門学校や大学の場合は、学校の許可をもらい、校門前での各種クーポン券の配布やキャンペーンの企画の案内等を行うことである。
・ またこの時、各サークルや部活へのアプローチも可能なので忘れてはならない。
5. 街頭でのクーポン券配布
・ 駅を中心とした立地の場合は、街頭での各種クーポン券の配布が効果的である。
・ ポイントは、配布する時間帯と各種クーポン券の質感が重要になってくる。
ペラペラなクーポン券などは、その多くが捨てられているのも見たことがあると思うが、ゴミにもなるしあまり効果が期待できない。
・ また、配布する時間帯は、朝の出勤する前か、お昼休みの時間がベストである。
ほとんどの人は、その日の夜に行く場所はお昼までに決めているからである。
6. 地域活動
・ 地域のサークルへの挨拶も欠かせない販促の一つである。また、運動会や地域の文化祭への参加も立派な販促活動である。
・ ポイントは、自分達が商売をしているその地域の人たちと一緒に活動することが大切である。時間が許す限り、地域のゴミ拾いや掃除のお手伝いも忘れてはならない。このような活動を通じて、コミュニティーに徐々に溶け込むことによって、その地域にとってなくてはならないお店になってゆくのである。
7. 店舗視認性
・ 最後は店舗の視認性の改善である。これも販促活動の一つである。
・ お店にご来店いただいたお客さまへの「いらっしゃいませ」が最初の挨拶ではない。実は、のれんや看板、懸垂幕やのぼり、そしてバナーや夜の照明が、お客さまに対する最初の挨拶である。
・ 私はお客さまへの最初の挨拶は、のれんと看板だと何時も言っている。それは、知っているお客さまには当然であるが、お店のことを知らないお客さまにも自分たちの存在を知っていただくための最初の挨拶が、のれんであり、看板だからである。
・ ポイントは、いつも綺麗で、電球切れなどなく、そしてアクリル板であれば水垢のない状態で磨きこまれていなくてはならない。それは、お客さまにこのお店であれば安心して入れると思っていただくためである。
のれんも同じである。いつもきれいなものを付けることで、人目を引き、お客さまの来店を促進することが出来るのである。
*他にもいろいろあると思うが、そのお店にあった販促ツールを選び、そして繰り返し、繰り返しの活動が何より大切であると言うことをくれぐれも忘れないでいただきたい。
結果分析が重要
全ての活動の締めくくりは結果分析になる。勿論、プロモーション活動の場合も同じで、必ず活動の結果を取りまとめ、その結果分析を行う必要がある。
その分析で大切なことは、どの対策が上手くいき、どの対策が上手くいかなかったのかを明確にすることである。それは、上手くいった事は継続し、上手くいかなかった事は、対策の修正か変更が必要である。
結果分析をしないと、漫然と同じことを繰り返すことになるからである。
勿論、場当たり的な販促でも当たることもあるが、まったく当たらないこともあり、数値責任を負う店長・支配としては、計画的な活動によってのみ、自らの数値責任を果たしてゆくのである。これが計画経営の基本でもある。
プロモーションで大切なことは、必要なときに、必要なツールで、必要なだけの売上を確保することである。売上高も順調で、オペレーションとのバランスも良い状態なのに、お決まりのような販促活動は必要ないし、また、大きなディスカウントを打つことで一度に多くのお客さまを集めることも必要はないのである。
オペレーションの力に合った、お客さまの数を忘れてはならない。
最も重要なことは、継続的なお客さまの獲得であり、お客さまからの信頼を得ることである。これがストアロイヤリティーにつながり、お店を繁盛店へと導いてくれるのである。結果分析はそのことを可能にし、更なる店舗の発展を約束してくれる。
以上