マーケティングの究極の目的
前回は、顧客の創造のためのマーケティング活動の基本的な考えについて説明しました。そこで、今回と次回でそのマーケティング活動の中でも店長・支配人がしなくてはならないプロモーション活動の店内活動と店外活動について説明致します。
その前に、今一度マーケティング活動の基本的な考えについて確認をしておきたい。
お店の存在価値は、お客さまの満足とお客さまの創造であることは言うまでもないことである。つまり、自らの力でお客さまに満足していただき、そして自らの力でお客さまをつくり続けることである。
その自らの力でお客さまをつくる喜びと、お客さまを本当に大切にするマインドを身に付けることで、明日の店づくりを進めてゆくのである。
これが、マーケティングの究極の目的である。
つまり、マーケティング活動の結果は、お客さまが増えなくてはならない。もしマーケティング活動をしてもお客さまが増えていないのであれば、その活動は失敗と言うことになり、目的は達成されていないことになる。
そこで、必要になってくるのがマーケティングに対する基本的な考え方と、その実践的な活動になる。
3つのマーケティング活動と2つのプロモーション活動
まず、レストランやホテルビジネスにおけるマーケティング活動であるが、これは大きく3つに分類されている。それは、スタンダード(Standard)と価格(Price)と、そしてプロモーション(Promotion)である。
その3つのマーケティング活動の中で、店長・支配人がしなくてはならない活動がプロモーション活動である。
それは、自らの力でお客さまの満足と、お客さまの創造をすることでお店を繁盛店へと導いてゆくのである。
その店長・支配人が行ってゆくプロモーション活動には、大きく分けて店舗内活動と、そして店舗外活動がある。
今回お話するのは、その一つである店舗内活動についてである。
このことが出来ていないことには、決して店舗外活動を行ってはならない。それはお客さまの満足を得ることのない活動は逆効果を生むからである。
店舗内活動
店舗内におけるプロモーション活動の目的は、現在自店舗をご利用していただいているお客さまに対して、再来店を促し、来店頻度を高めることである。
つまり、一度ご来店頂いたお客さまに、次回も気軽に来ていただくための活動であるが、この前提にはその時のお客さまの満足が大切になっている。
よくお店を訪問すると、入り口周辺のゴミ箱にいろいろなクーポンが投げ捨てられているのを見るが、そんなお店に限ってお客さまの満足を前提にしたプロモーション活動が行われていない。
これでは、単なるクーポンのバラマキで、気休めにしかならない。最悪の場合、店内プロモーションが逆効果になることさえある。
プロモーションの基本は、あくまでもお客さまの満足を最良の販売促進活動にしながら行うものである。
そんなお客さまの満足を得ながら、同時に店内のプロモーション活動を行うから効果的な売上対策になってくるのである。
このことをしっかり理解したうえで店内販促を実施しなくてはならない。
店内プロモーションの基本的なツール
ではここで、店内プロモーションの基本的なツールについて説明することにしよう。
店内のプロモーションのツールには様々なものがある。
例えば、メニューブックであるが、これも立派なプロモーションのツールである。
このメニューブックを見て、お客さまが商品を選び注文するのである。
このメニューブックが、ボロボロであったり、実際の商品と違う写真では、お客さまの期待は完全に裏切られることになる。
お客さまは期待通りか、もしくは期待以上のものがお店から提供された時に、リピーターとなって再来店されるのである。
お客さまは、基本的に来なくて当たり前。来ていただいても2度3度来なくて当たり前である。そんな、来なくて当たり前、2度3度来なくて当たり前のお客さまに、また来ていただく訳であるから、大変な努力をしなくてはいけないのである。
お客さまが得をするお店が繁盛店である。
逆にお客さまが損をするお店が不振店である。
さらに、お客さまが得をし、お店も得をするのが商売である。
商いをしてもし儲かっていないのであれば、それは商売とは言わない。
お客さまが得をし、お店も得をするプロモーション活動こそが真の店内活動である。
それでは、ここで具体的な店内プロモーションツールとそのポイントについて説明しよう。
今回紹介するプロモーションのツール・活動は、全部で8つの項目である。
その8つの活動とは、
1. メニューブック
2. POPスタンド
3. ポスター
4. クーポン券の配布
5. キャンペーンの実施
6. お客さまの声カード
7. お客さまデータの活用
8. 特別な販促である。
では、一つひとつ具体的に説明してゆこう。
1. メニューブック
・ 店内プロモーションでは、最初のツールが実はメニューブックになってくる。メニューブックを見てお客さまが商品を選びそして注文するのである。我々も、お店で販売する商品のメッセージをメニューブックに込めているのである。このメニューブックが店内販促ツールのスタートである。
・ ポイントは、常に綺麗な状態のメニューをお客さまに見ていただけるようにしておくことである。ボロボロであったり、破れていたのでは、商品そのものの価値を下げることになってしまうので注意しなくてはならない。
もちろん、写真と実物が同じ状態であることは言うまでも無いことである。
2. POPスタンド
・ テーブルの上に置いてあるのがPOPスタンドである。これもメニューと同じでお店で販売する商品のメッセージが込められている。
・ ポイントは、メニュー同様にこれもいつもきれいな状態に保つことが何より店内販促では重要である。それとたいていのお店では、アクリルのポップスタンドを使っているが、このアクリルが汚い。中のポップがいくら綺麗な状態でも、ポップのアクリルが汚れていてはその訴求効果は弱くなってしまうので注意しなくてはならない。アクリルはピカピカの状態が基本である。
3. ポスター
・ 店舗内には、季節の商品紹介やキャンペーンポスターがあると思うが、これも店内販促の大切なツールである。
・ ポイントは、汚れや破れ、それに色あせには十分注意しなくてはらない。平気で破れたポスターをそのままにしているお店や、セロテープ等で汚く補修しているお店を見るが、その時点でお客さまのお店に対する評判が落ちることを忘れてはならない。ポスターは、必ずポスターパネル等に入れ、そのパネルのアクリル部分を綺麗に保たなくてはならない。
4. クーポン券の配布
・ クーポン券等の配布は、もちろん繰り返し来ていただくことを目的に行う店内プロモーション活動である。コーヒー無料券やドリンク無料券などがそれに当たる。
・ ポイントは、お客さまの満足を得る良いオペレーションが出来ていることである。良いオペレーションが出来ていないのに、クーポンを配布すると必ず逆効果の現象が起こるので注意しなくてはならない。また細かいことであるが、クーポンの内容やクーポン券の紙質がよくないと、店外のゴミ箱に捨てられる危険性があるのでこれも注意しなくてはならない。
5. キャンペーンの実施
・ キャンペーン活動には様々なものがある。一般的なものではスタンプラリーやスクラッチカードで、クーポン券の配布同様にやはり来店頻度を高めることを目的とした販促ツールである。ただしキャンペーンの成否は、お店の状態と連動するので、お店の状態が良くない場合には見送らなくてはならない。
・ ポイントは、キャンペーン期間中に熱烈なファンを作ることである。つまり、繰り返し、繰り返しお店を利用していただいているお客さまと親密になることである。
6.お客さまの声カード
・ よくテーブルポップ等に入れてあるお客さまの声カードは、店舗をお客さまの要望に近づけるための最大の販促物である。このお客さまの声カードは単なるアンケート用紙ではない。お客さまのお店に対する評価やお店に対する要望が多く書かれていることを忘れてはならない。
・ ポイントは、必ず内容を確認し、業務の改善改革に役立てることである。お客さまの声カードに記載されている内容には、クレームや要望が多が、出来れば返事を書くことを勧める。この返事がもう一度我々に仕事のチャンスを与えてくれるのである。その時こそ、お客さまの満足を得る良いオペレーションを行わなければならないのである。
7. お客さまデータの活用
・ スタンプラリーやクーポン券の裏を利用して、お客さまデータを収集し、DM等での販促活動である。これは、ダイレクトにお客さまに対してアプローチをかけることができる効果的な活動である。
・ ポイントは、お客さまデータ管理の仕組みと、オペレーションを連動させることで、費用対効果を明確にすることである。単にお客さまのデータの数だけ追うと大きな費用だけがかかり、非常に高いものについてしまうので注意しなくてはならない。多くの企業がこれで失敗している。
8. 特別な販促
・ 特別な販促とは、お客さまが店長に代わってお店を宣伝してくれる販促活動のことである。実は、この販促活動が一番効果的なのである。
・ ポイントは、自店舗のヘビーユーザーをしっかりと把握し、そのお客さまに特別なサービスをすることである。これには、何もお金をかける必要などない。
お客さまのお名前をみんなで覚えて、お名前でお客さまをお迎えするところからはじめれば良いのである。
店舗内活動とは
今回8つの店内プロモーションのツールと活動について説明したが、もう既にお分かりの通りどれもお客さまの満足を求めての活動である。
お客さまの満足なしには、どんなプロモーション活動も色あせてしまうのである。
現に、価格によるプロモーション活動などは既に行き詰っている状況にある。お客さまが満足をするということは、期待通りか、もしくは期待以上のことが店から得られたときである。
お店では、いろいろな活動が繰り返し行われていると思うが、もし数値に変化がないのであれば、今一度全ての活動を見直してみなくてはならない。
大切なことは、活動そのものではなく、結果としてのお客さまの満足にあることを忘れてはならない。
次回は、店舗外活動について説明することにしよう。
以上